<従軍慰安婦についての出典のはっきりした本当の話>

従軍慰安婦(または慰安婦)とは日中戦争や太平洋戦争中、朝鮮や日本などから動員され、兵士相手に慰安所買売春施設)で性の相手となることを強要された女性たちです。1991年韓国の元慰安婦 金学順さんの名乗りでと補償と謝罪要求があってから一般に広く知れ渡りました。しかしネット上にはあまりに歪んだ情報が溢れています。本ページは出典を明らかにしつつ慰安婦について正しい情報をお届けします。


<全体目次>

1章.従軍慰安婦とは何か

当時は売春婦と考えられていましたが、現在の人権意識から見れば軍隊に強制売春をさせられている性奴隷というべき存在です[注1]。当時日本には公娼制度があり、金銭でしばり売春を行わせることが合法的に行われていましたが、現在ではこの公娼制度自体が、廃業の自由がない(嫌になっても止められない)、居住の自由がない(逃亡防止のため遊郭の外に住まわせなかった)事から強制売春であり、奴隷制度であると考えられています。こうした見方は女性史など研究者の間ではほぼ共有されていますが、一般的には浸透していないようです。しかし、2007年の安倍首相の慰安婦についての発言に、アメリカから一斉に非難の声があがったように、世界的には性奴隷(Sexual Slavery)であるという見方が大勢をしめていると言うべきでしょう。


従軍慰安婦公娼制度より更に過酷で、見せかけの保護規定もない剥き出しの性奴隷であると吉見義明は指摘しています。慰安婦には、多くが甘言・強圧などで拉致・誘拐されたものであること、相手を拒否する自由がないこと、外出が制限され行動の自由がないこと、現在の証言から多くが業者に騙されてまったく賃金をもらっていないこと、などからより過酷な奴隷制度だと考えられています。


更にその状況は、相手が軍人が主であり、戦闘を前にした軍人は気が荒く逆らえば暴行されること、日本軍には休暇制度がなく慰安所だけが実質的に唯一の娯楽制度であり、多いときには30から40人もの相手をさせられ非常に過酷であること、場所が最前線の戦地まであり空襲や敵の攻撃などの危険があること、更に最近の研究では、軍によるまったくの誘拐・監禁・連続の強姦といった状況もかなり存在すると見られる点で、日本軍によるはなはだしい性犯罪(戦争犯罪)であると考えられています。

分かり易い慰安婦に関する本

[注1]主に吉見義明の著作、記事ではっきり指摘されています。分かり易いのは、

  • 従軍慰安婦」をめぐる30のウソと真実 吉見義明・川田文子 大月書店 1997:コンパクトなQ&A集
  • 強制の「史実」を否定することは許されない 吉見義明 世界. (764) [2007.5]:最近の研究結果を紹介して言明、東京裁判で日本軍の慰安婦が既に有罪判決が出ているなどの新しい証拠を指摘
  • 従軍慰安婦 吉見義明 岩波新書 1995:初めて国の関与証拠資料を発見した学者の決定版研究書、詳細に全貌を記述

2章.慰安婦の強制連行はあったのか

官憲などによる組織的な強制連行を示す資料はありません、しかし強制連行されたとのいくつもの証言があり、慰安所に監禁して無理に兵士の相手をさせた事が強制であり、当時の刑法に照らしても犯罪だと指摘されています。

1977年に『朝鮮人慰安婦と日本人』(吉田清治)が出版され、その中で著者は当時自分を含む日本官憲が朝鮮の女性を強制連行し慰安婦にしたと記し、朝鮮人女性の強制連行(奴隷狩り)を証言した。1991年には韓国で初めて元慰安婦であることを証言した金学順が日本政府に謝罪を求め東京地裁に提訴するなど、慰安婦が強制連行されたという訴えが起きて、日韓両国間での問題となりました。


日本政府は当初軍の関与を否定していたが、1992年吉見義明が軍の関与を示す当時の資料の存在を指摘したため、1993年には政府が慰安婦についての調査を行い結果を発表した[注2]。また強制性を認める河野談話を出しました。これにより、募集・移送・管理において総じて(すなわち全体として)[注3]強制性があったことが政府により認められました。これで外交面での問題は収束したと見られている。


しかしその直後から強制連行の証拠はないという指摘が目立ち始め、1996年の歴史教科書問題を契機にいわゆる自由主義史観論者や産経新聞を中心に慰安婦の強制連行はなかった、慰安婦問題などないという声が盛り上がりました。これらの声では強制連行とは「官憲などによる奴隷狩りのような暴力的な連行」であり、これは時に「狭義の強制連行」と呼ばれます。現在これを示す政府資料は発見されていません。
[注2]いわゆる従軍慰安婦問題について(PDF)、内閣官房内閣外政審議室、1993年8月4日  http://www.mofa.go.jp/mofaj/area/taisen/pdfs/im_050804.pdf
[注3]「総じて」の意味は募集・移送・管理の全体を見ての意味だと河野は答えている(平成9年3月31日朝日新聞

<強制連行についての正しい答え>

  1. 河野談話を出した河野官房長官慰安婦に自由がなく、本人の意思に反したという意味で強制性はあったとしている(朝日新聞 平成9年3月31日のインタビュー記事より)。
  2. 吉見義明は強制連行の例はいくつもあることを指摘し、その上で暴力的な強制連行だけを問題にする事を批判し、まず甘言などで騙して連れてきた場合でも当時の刑法に照らして略取・誘拐罪にあたり、奴隷狩りのような暴力的な連行でなくともそれは犯罪行為(誘拐)であると指摘している(朝日新聞 2007年4月18日 吉見義明の投稿記事より)。
  3. 更に中国や太平洋地域の前線近くでは軍による暴力による徴募と監禁、繰り返しの強姦もたくさん報告されており、こうしたものは軍による組織的な性犯罪だと指摘されている。(慰安婦戦時性暴力の実態1および2 緑風出版 2000で報告されている占領地での日本軍の蛮行について)
  4. 日本人慰安婦については、それが当時の公娼制度と同質のものであっても、公娼制度自体が実際には金銭で行動をしばる人身売買であり、奴隷制として扱われるべきであると女性史の研究家から指摘されている(例えば 川田文子(戦争と性:近代公娼制度・慰安所制度をめぐって 明石書店 1995)など)。

以上から、研究者は慰安婦とは日本軍・政府による性奴隷または強姦などの性犯罪の被害者であると考えています。従って研究書では慰安婦とは性奴隷、軍性奴隷などと書かれています。こうした見方に反対する研究者は秦郁彦一人だけであり、彼の本はそれが研究と言えるかどうか前田朗などから疑問の声があがっています。


なお海外での受け取り方は国連のマクドゥーガル報告書に見るように、性奴隷であり国家に保証責任があるというのが一般的であり、そうした見方では慰安所での慰安婦の状態が既に犯罪であり募集の際に暴力的に連行したか否か(強制連行か否か)は問題にされていません。

3章.河野談話とは何か

1993年8月4日に、慰安婦に関するそれまでの政府による調査結果の発表に際して当時の河野官房長官から出されたコメントです。慰安婦に対して以下を明確に認めています、

  1. 慰安所の設置、管理、移送について旧日本軍が直接あるいは間接に関与した
  2. 慰安婦の募集では、甘言、強圧による強制があった、官憲が直接これに加担したこともある
  3. 慰安婦の生活は、強制的な状況の下での痛ましいものだった

調査結果は「いわゆる従軍慰安婦問題について」という文書で外務省のHP[注2](前出)で読めます。

<談話発表の経緯について(事実はどうなのか)>

当時慰安婦問題が日韓両国間の課題となっており、韓国側から韓国国民の受け止め方から強制性を認めることが問題解決に絶対必要との意向が示されていました。日本政府は強制性について明確な判断をすることが必要だという認識の下でいわゆる狭義の強制連行証拠がないことを十分承知の上でこの判断をしています。これが政治決着であり、正しい歴史事実の認定ではないという反論がいわゆる自由主義史観論者や産経新聞からありますが、河野洋平自身は下記の様に歴史的事実として判断したことを述べています。

  1. 証拠資料が発見されなかったことに対しては、組織として強制連行を行っていても、無理にでも連れてこいという命令書や、無理に連れてきましたという報告書は作成されることはないだろう、という見方を示しており、発見されなかった事を十分理解している。
  2. 強制を認めた根拠には募集・移送・管理等の過程全体をみてであり、慰安婦に自由行動の制限があったことをあげており、狭義の強制連行の有無などは問題にしていない。
  3. 慰安婦へのヒアリングでは実際に体験した人でなければ出てこないような、話が次々に出てくることをあげて信頼できるとしている。
  4. 韓国からは補償などの金銭的要求をしない事との取引ではないことを言明している。(上記4つとも朝日新聞、1997年3月31日の河野洋平氏へのインタビューより)
  5. 石原信雄次官はこの談話に否定的ですが、産経新聞へのインタビューにもこの判断が金銭との取引ではなかったことを述べています。(平成9年3月9日産経新聞 石原元官房副長官インタビュー 問:韓国側が国家補償を要求しないかわりに日本は強制性を認めるとの取引があったとの見方がある 答:それはない。当時両国間で(慰安婦問題に関連して)お金の問題はなかった。)

河野談話 全文>

いわゆる従軍慰安婦問題については、政府は、一昨年12月より、調査を進めて来たが、今般その結果がまとまったので発表することとした。


今次調査の結果、長期に、かつ広範な地域にわたって慰安所が設置され、数多くの慰安婦が存在したことが認められた。慰安所は、当時の軍当局の要請により設営されたものであり、慰安所の設置、管理及び慰安婦の移送については、旧日本軍が直接あるいは間接にこれに関与した。慰安婦の募集については、軍の要請を受けた業者が主としてこれに当たったが、その場合も、甘言、強圧による等、本人たちの意思に反して集められた事例が数多くあり、更に、官憲等が直接これに加担したこともあったことが明らかになった。また、慰安所における生活は、強制的な状況の下での痛ましいものであった。


なお、戦地に移送された慰安婦の出身地については、日本を別とすれば、朝鮮半島が大きな比重を占めていたが、当時の朝鮮半島は我が国の統治下にあり、その募集、移送、管理等も、甘言、強圧による等、総じて本人たちの意思に反して行われた。


いずれにしても、本件は、当時の軍の関与の下に、多数の女性の名誉と尊厳を深く傷つけた問題である。政府は、この機会に、改めて、その出身地のいかんを問わず、いわゆる従軍慰安婦として数多の苦痛を経験され、心身にわたり癒しがたい傷を負われたすべての方々に対し心からお詫びと反省の気持ちを申し上げる。また、そのような気持ちを我が国としてどのように表すかということについては、有識者のご意見なども徴しつつ、今後とも真剣に検討すべきものと考える。

われわれはこのような歴史の真実を回避することなく、むしろこれを歴史の教訓として直視していきたい。われわれは、歴史研究、歴史教育を通じて、このような問題を永く記憶にとどめ、同じ過ちを決して繰り返さないという固い決意を改めて表明する。なお、本問題については、本邦において訴訟が提起されており、また、国際的にも関心が寄せられており、政府としても、今後とも、民間の研究を含め、十分に関心を払って参りたい。

4章.慰安婦を研究している人はなんと言っているか

新聞や雑誌を読むと激しい論争があるように思いますが、では研究者はどう見ているのでしょう?実は慰安婦を研究している人で慰安婦を職業的な売春行為だとしている人はほとんどいません。最初に資料を発見した代表的な研究者である吉見義明と異なる立場をとる研究者は、実際上秦郁彦1人だけです。研究者の間では慰安婦が旧日本軍による犯罪(誘拐・監禁・強姦による性暴力)であることに異論はありません。研究者の意見としては吉見義明が精力的に公表を行っていますが、一方歴史学社会学の学者などの研究者の動きは見えにくいのですが、例えば本HPの参考書リストなどを見れば少し様子がわかるでしょう。


更にこうした研究者の見方を具体的に示すものには以下があります。

慰安婦に関する研究者の見方

  • 吉見義明は2002年それまで約10年間の慰安婦に関する研究状況を振り返り、多くの資料や証言が発掘され、研究者の協調が進んだことを記しています。この中では慰安婦と公娼との差異について議論があっても、慰安婦が性奴隷(ないしそれ以下の犯罪被害者)であることでは議論がないことがはっきり書かれています。(日本軍性奴隷(「従軍慰安婦」)制度研究の現段階 吉見義明 戦争責任研究 (38) [2002.冬季])
  • 2005年に実地での証言や資料の研究をまとめた朱高蘭は、それまでの慰安婦研究を振り返り11冊を主要な研究書としてあげています。この中では吉見義明らの著書と共に中国の研究もあげられていますが、性奴隷か否かでは議論があるとはされていません。(台湾総督府慰安婦 明石書店 2005)
  • 金冨子は慰安婦の研究書の書評の中で慰安婦研究を概観して、公娼と慰安婦はどういう関係にあるかについての研究者の見方を整理しています。しかし慰安婦が性奴隷かそれ以下である点ではほとんど差がないとしています。(書評 尹明淑『日本の軍隊慰安所制度と朝鮮人軍隊慰安婦』 金富子 歴史学研究 (792) [2004.9] 書評の中で慰安婦研究を概観している)
  • 上野輝将は従軍慰安婦に関する論争自体を対象に研究をしていますが、その中で研究者の動向を振り返り、慰安婦が性奴隷であることには研究者の間には議論はないとしています。いわゆる自由主義史観論者など反対している人が吉見義明の研究に触れないのは、学問的な議論では太刀打ちできないからと、見ています。又反対している歴史学者中村粲秦郁彦だけで彼らも吉見らの研究にはふれず政府の対応などしか批判していない事を指摘しています。(性を考えるわたしたちの講義 世界思想社 1997)

5章.元慰安婦の証言は信用できるのか

初期の証言では証言ごとに異動があり疑問を呼んだようですが、現在までの研究では元慰安婦の体験を聞くには大変な手間をかけ、その信頼性を確認しながら行われており、少なくとも研究者が慰安婦の実態として参考にしている証言は信用できます。

韓国人元慰安婦の証言は信用できるのか

初期の韓国の挺身隊問題対策協議会の調査では、実際に名乗り出た人の中から半分しか証言集に載せていません。『調査を検討する上で難しかったのは証言者の陳述がたびたび論理的に矛盾することであった。すでに50年前の事なので、記憶違いもあるだろうが証言したくない点を省略したり、適当に繕ったりごちゃ混ぜにしたりという事もあり、またその時代の事情が私たちの想像を越えている事もあるところから起こったことと考えられる。(略)私たちが調査を終えた19人の証言は私たちが自信をもって世の中に送り出すものである。(略)証言の論理的信憑性を裏付けるよう、証言の中で記録資料で確認できる部分はほとんど確認した。』として、40人中19人の証言だけを収録しています。(証言・強制連行された朝鮮人慰安婦たち 明石書店 1993)

そのほかの元慰安婦の証言は信用できるのか

これ以降の研究では、証言を調査する上ではかなり注意深く行われています。石田米子らは中国山西省の元慰安婦について現地調査を行い9人の慰安婦の証言をまとめ公表しています。調査では中国人の協力を得て、元慰安婦への聞き取りでは2回しかできなかった1人を除き1日かけた面接を7回以上行い、周辺資料と突き合わせ年月などを確認しています。(黄土の村の性暴力 創土社 2004)


2005年に研究を公表した朱徳蘭は多くの慰安婦と面接調査を行い、46人について結果を横断的にまとめています。調査では3時間程度の面接を3回行い、横断的な質問事項について尋ねています。それでも多くが教育を受けておらず外国の地名など不明な事、業者をたやすく信頼しその年齢や氏名など不明な点があることを記しています。 (台湾総督府慰安婦 明石書店 2005)

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