慰安婦強制連行の新証拠について

今年4月に発表された、強制連行の新しい証拠について実は知られていないし、その意味も理解されていないようです。だから情報を提示することに意味がありそうなのでここにまとめておきます。


この慰安婦従軍慰安婦)強制連行の新証拠は2007年4月17日、日本の戦争責任資料センターから外国特派員協会で公表されました。配付資料は日本の戦争責任資料センターのHP(http://space.geocities.jp/japanwarres/)より入手できます。内容は安倍首相への公開質問状、国際刑事裁判所による拉致の定義、東京裁判での証拠資料(新証拠)などです。

(1)新聞各社での報道

慰安婦強制示す調書、東京裁判に各国検察提出』(中略)一連の資料について林教授は「これらは各国が作成した公文書であり、判決でも強制したことが事実認定されている。サンフランシスコ平和条約で戦犯裁判を受諾した日本には、これらの文書の意味は無視できないだろう」と話している。

日本軍の強制示す公文書3点の大要(邦訳)公表資料は英文ですがその中からオランダの証拠を一部翻訳 http://www.jcp.or.jp/akahata/aik07/2007-04-19/2007041906_02_0.html

『Japanese Researchers Rebut Premier's Denials on Sex Slavery』研究者が安倍首相の否定発言を打ち消す証拠を発表したことを伝え、裁判証拠が日本軍人が女性を強制的に集めた事を伝えている。「Japanese soldiers and sailors rounding up foreign women for use as sex slaves」、これにより首相の歴史観はますます孤立したものとなうだろう、安倍氏の事務所にコメントを求めたが何も得られなかった事、ソウル国立大学のChung Chin Sungはこれは強制連行を示す唯一の証拠だ、とのコメントを載せている。

外国特派員協会で公表された資料』4月17日の外国特派員協会においての、発表の生の様子を伝えている。

(2)強制連行を示す証拠内容

東京裁判での慰安婦の強制連行を示す証拠内容とは、オランダ、フランス、中国などが作成した調書、陳述書で、8点におよぶもので東大図書館にあったそうです。配付資料は16ページで、Prosecution Document No(検察側書類番号)、Exhibit No(法廷証拠番号)も記載されています。

  • オランダ →赤旗サイトで翻訳文が読める

ボルネオ島で海軍の軍属に対する尋問調書。地元女性が日本軍に拘束され裸で立たされる状況に触れて「抑留したのは彼らを淫売屋に入れるために、口実を設けるために警備隊長の命令でなされたのです」

  • フランス

憲兵に逮捕されたベトナム人女性の口述書「日本人はフランス兵と一緒に生活していた私の同国人数人に、光安に設けた慰安所(brothel)へ一緒へ行くよう強制しました」

  • 中国

日本軍の桂林での残虐行為に言及「周囲から女工を集め麗澤門外に連れ行き、脅迫して妓女(慰安婦)として獣のような軍隊の淫楽のために使った」

(3)今回の証拠の意味

東京裁判では東條英機以下20数人が50以上もの訴因で起訴された訳ですが、これは訴因「一般的な戦争犯罪 Conventional War Crimes」での証拠資料であり、この訴因について東條英機他が有罪と宣告されています。


この戦争犯罪の罪を立証する為の証拠資料中に、慰安婦への虐待行為、強制連行が含まれていたと言うことです。戦争犯罪と言えばよく言われるのが捕虜の殺害などですが、戦時下における民間人への強姦も戦争犯罪の一要件として問われたと言うことでしょう。戦時下の強姦は国連のマクドゥーガル報告書でも戦争犯罪と指摘されています。東條英機がこの罪に問われたと言うことは、実際に実行した末端の兵士の行為が彼ら個人の犯罪ではなく、軍としての組織的行動であり、その監督責任を問われたという事でしょう。


上記から、東京裁判で日本軍が「組織的に慰安婦を強制連行」し非人道的な扱いをした事が、認定されていた事が明らかになったと言う事です。この東京裁判にはいろいろ批判がありますが、現在の日本政府はこの判決を受け入れる事を前提に和平条約を結んでいるわけで、ともかく政府(安倍首相)は否定はできません。従って林教授の「これらの文書の意味は無視できないだろう」という発言につながるわけです。


こうした関係性により、今後日本政府が慰安婦を強制連行した証拠はない、とは大変言いにくくなったと言えましょう。