5章.元慰安婦の証言は信用できるのか

初期の証言では証言ごとに異動があり疑問を呼んだようですが、現在までの研究では元慰安婦の体験を聞くには大変な手間をかけ、その信頼性を確認しながら行われており、少なくとも研究者が慰安婦の実態として参考にしている証言は信用できます。

韓国人元慰安婦の証言は信用できるのか

初期の韓国の挺身隊問題対策協議会の調査では、実際に名乗り出た人の中から半分しか証言集に載せていません。『調査を検討する上で難しかったのは証言者の陳述がたびたび論理的に矛盾することであった。すでに50年前の事なので、記憶違いもあるだろうが証言したくない点を省略したり、適当に繕ったりごちゃ混ぜにしたりという事もあり、またその時代の事情が私たちの想像を越えている事もあるところから起こったことと考えられる。(略)私たちが調査を終えた19人の証言は私たちが自信をもって世の中に送り出すものである。(略)証言の論理的信憑性を裏付けるよう、証言の中で記録資料で確認できる部分はほとんど確認した。』として、40人中19人の証言だけを収録しています。(証言・強制連行された朝鮮人慰安婦たち 明石書店 1993)

そのほかの元慰安婦の証言は信用できるのか

これ以降の研究では、証言を調査する上ではかなり注意深く行われています。石田米子らは中国山西省の元慰安婦について現地調査を行い9人の慰安婦の証言をまとめ公表しています。調査では中国人の協力を得て、元慰安婦への聞き取りでは2回しかできなかった1人を除き1日かけた面接を7回以上行い、周辺資料と突き合わせ年月などを確認しています。(黄土の村の性暴力 創土社 2004)


2005年に研究を公表した朱徳蘭は多くの慰安婦と面接調査を行い、46人について結果を横断的にまとめています。調査では3時間程度の面接を3回行い、横断的な質問事項について尋ねています。それでも多くが教育を受けておらず外国の地名など不明な事、業者をたやすく信頼しその年齢や氏名など不明な点があることを記しています。 (台湾総督府慰安婦 明石書店 2005)