歴史修正主義
歴史修正主義(historical revisionism)とは修正主義の一つで、学術的には新しく発見された史料や既存情報の再解釈により、歴史の書き直しを主眼とした動きをいう。一般に伝統的な歴史解釈に対して別の解釈を提示すること。一般的に、論者自身が自らを歴史修正主義と呼称する事は希である。英語のrevisionismそのままにリヴィジョニズム(リビジョニズム)と呼ぶ場合も少なくない。歴史的修正主義とも呼ばれる。

歴史修正主義は否認主義との関わりが強く、西欧ではホロコースト否認を暗示する。日本では南京事件やアジア太平洋戦争での侵略性の否認で見られる。政治的事件では戦争における不法行為や虐殺、政治上の大量殺戮やいわゆる民族浄化に関わる話題において、否認主義を歴史の修正(立場に寄れば捏造)と呼ぶことから論争の焦点となることが多い。

例としては、ドイツではホロコーストの歴史的記述に対して、アウシュビッツ収容所などに大量の殺人処理を行う施設能力はないなどとして、異議・疑義を唱える者たちに使われる。日本では、1990年以降になっても南京大虐殺の存在自体を否定する言説が代表的であるが、慰安婦について日本軍の強制性を否認したり、沖縄戦の「集団自決」について日本軍の強制を否定する言動などにも当てはまる。

歴史修正主義的主張を行う論者は、自分たちへの批判を社会主義思想(左翼思想・サヨク)などによる政治的言動であり、事実の検討・議論とは異なるとして、逆に批判する場合がある。例えば秦郁彦石原慎太郎の発言(2007年12月13日 産経新聞沖縄戦集団自決をめぐる高校教科書検定問題で、東京都の石原慎太郎知事は都議会一般質問で答え、政治的な思惑で歴史事実を書き換えることは許されないとした」)など論者が付随事項として述べる場合が多い。これは日本では旧日本軍の侵略性・犯罪を指摘してきたのが、政治的団体としては社会党共産党などであった事と重なっている。

しかし社会主義大国ソ連の崩壊と冷戦終結後の2007年現在、歴史的議論にせよ政治的対立にせよ、その源泉が伝統的な左翼/右翼のイデオロギー対立であるとする考え方は専門家にはなく、現在明確なのは安倍前首相が掲げた「戦後レジューム」の脱却、即ち戦後民主主義の否定と日本国を戦争可能な国にするための作業の一貫としての旧日本軍の悪業の隠蔽にあると指摘されている。